千代が丘の家
Program: house,shop
Location: Kawsaki, Kanagawa
Floor area: 69.55㎡
photo: Ichiro Mishima
2022-2024
ひとりの⼥性が住まいながらお店をする兼⽤住宅。敷地は近郊の住宅地にあり、古い⽊造住宅が建っていた3つの敷地を4区画に再編された1区画である。新たに造成された擁壁からは昔の⾯影はなくなって、いわゆる宅地造成の⼀⾓であったが、東側は交差点、南側は道路や市⺠農園がある明るい場所であり、店舗を商うための開放性と視認性という⾯で魅⼒的な⼟地であった。
歳を重ねても新しい挑戦を楽しまれ、⾃分の興味に従って活動されるエネルギーに満ちたライフスタイルの持ち主で、⾃ら縫製した服飾や陶芸作品を販売し、しょうが料理の飲⾷店をやりながら暮らすことを望んでいた。そこには⽣活の基本的な要素である⾐⾷住が全て詰め込まれている。暮らすということと商うということがひとつの建物の中で同化したとき、すべてが⽣活の⼀部となる。相反するものを機能的に分断せずに、あらゆるものを曖昧な状態にして⽣活が横断し共存できる建築を考えた。また住宅地にある⼩さな家としての顔だけではなく、⼈を招き⼊れ、街と融合していく⼒強さを兼ね備えた建築を⽬指した。
東側は交差点があり交通量が多く開けているため平屋の店舗とし、⻄側の2階を住居という構成にした。気積のある切妻平屋を折板屋根として、上部をひな壇状のテラスとしている。通常倉庫などで使うスケールの⼤きい素材を⽤いることで、勾配屋根の上にもうひとつ⽣活空間の広がりをつくった。外壁に⾷い込んだ折半屋根は住居の⽞関でもあり、お店でもある共⽤部となる。内部空間は2階から落ちてくる柱や⼟台、耐震壁を露出して構造のみとし、旧居で使⽤していた建具や家具を⼀部移設して再加⼯するなど、記憶を継承しながら新旧の融合をしている。