Room K - スリーピングボックスのある家
Program: apartment - renovation
Location: Inagi,Tokyo
Floor area: 52.5㎡
photo: Ichiro Mishima, Kei Kawabata
Publish: 住宅特集 2023年7月号, &Premium 2024年10月号, TOKOSHIE
2020-2021
東京郊外にある築50年の団地1室の改修。この団地が建つ場所は広大で起伏が多く、穏やかでゆったりとした雰囲気をもつ。部屋の目の前には庭のような心地よい植栽エリアがあり、裏手にはゆったりと枝を広げる大きな桜の木が見える。私たちは既存の仕切りを取り払い、この自然豊かな環境と風が感じられるようにひと部屋にして、スリーピングボックス、本棚、キッチンテーブルの大きな家具を3つ置くことにした。
昔、スウェーデンでは、部屋全体に早く熱を回し暖かく過ごせるように小さめに家をつくり、その小さな部屋を少しでも広く使うためのさまざまな工夫を施した家具がつくられていた。テーブルが椅子になったり、箪笥が机に変身したり。スリーピングボックス(箱形のベッド)もそのひとつで、中はとても暖かい。私たちはまず部屋の中心にスリーピングボックスを置いた。玄関側には靴箱、リビング側にはベンチ(蓋を開けると収納)、上段には子供が寝る場所と既存の柱・梁と組み合わせた猫の通り道、というふうに箱にいろいろな機能を盛り込んだ。窓のない西側には、床に引いた910mm角のグリッドを基準に、長く大きな本棚を立ち上げた。棚に取り付けた壁画が描かれた大きな建具は、部屋を行き来する。仕事場やダイニングを兼ねたキッチンテーブルは1本柱で軽やかに支える。これら3つの家具は、緩やかに空間を分けながら空間全体で呼応し合い、さまざまな居場所をつくり出している。周辺のランドスケープに続くような、家具と人と物と環境が溶け込んだ変化のある風景(日々)が生まれるのではないかと思っている。